みなさんこんにちは。日本橋はやし矯正歯科 院長の林 一夫です。
今回はハーフリンガル矯正で治療を行った症例をご紹介いたします。
- ハーフリンガル矯正をご存知ない方もまだいらっしゃると思います。
ハーフリンガル矯正は、装置が目立つ目立つ上顎を裏側矯正、装置が目立たない下顎を表側矯正で治療するもので、「比較的装置が目立たず、上下裏側矯正よりも安価である」ということが大きなメリットとして選択されます。
ハーフリンガル矯正についてはこちらをご覧ください。
中程度の「口ゴボ」と梅干しジワのお悩みでご来院されました
27歳女性です。
口元が出ていて閉じづらい、いわゆる“口ゴボ”と俗に言われている症状を主訴に来院されました。
口ゴボは医学用語ではないのですが、よく用いられる言葉になっております。
推察ですが「口がゴボッと盛り上がっている」という形状をイメージした表現がわかりやすいのかなと思っており、私も皆さんの理解の助け、そしてわかりやすさにつながるのであればという考えのもと使用しております。
初診時の患者さまの状態
側面写真です。
鼻の先のあごの先を結んだライン、イーラインから上下の唇が1.5mm程突出しています。
この症状は上下の前歯が唇側に傾斜し、突出してしまっていることで起こっています。専門的には「上下顎前歯の唇側傾斜」と言います。
しかしながら口元の閉じにくさはそれほど重度ではなく、オトガイ部位の「梅干し状の隆起」も軽度から中等度の範囲です。
※もちろん「中等度」と申し上げているのは歯科医師による診断で、患者さまの感じ方ではありません。
たとえ軽度であっても非常に悩まれている場合もありますので、そこを十分にヒアリングすることを追記させていただきます。
口腔内写真です。
この写真からも上下顎の前歯が著しく唇側に傾斜していることがおわかり頂けると思います。
側方の臼歯の上下の位置関係は、上顎の臼歯部に対して下顎の臼歯部がわずかに後方に位置しており、クラスⅡ傾向のクラスⅠの咬合関係でした。
※アングル分類とは、上下顎の第一大臼歯を基準に、上下の歯列弓の前後的な位置関係を示すものです。こちらについては別途コラムでご説明します。
患者さまへのご説明と診断、治療プラン
シミュレーションを元に診断をし、患者さまとお話をしご納得頂いたのは、以下の治療プランとなりました。
リスクや副作用もしっかりお話しています。
診断:口唇閉鎖不全、上下顎前歯の唇側傾斜(口ゴボ)、上下顎に軽度の凸凹を有する成人女性症例
治療プラン:上顎両側第一大臼歯、下顎両側第二大臼歯を計4本抜歯し、ハーフリンガル装置による治療
今回、ハーフリンガル矯正装置を選んだ理由は、患者さまの「費用を抑えつつ目立たない装置にしたい」というご希望によるものでした。
治療後の口腔内写真
術後の横顔の写真です。
主訴であった口元の突出感が適切に改善され、イーラインから上下の口唇が1mmほど後方に位置し、理想的な横顔を獲得することができました。
術後の口腔内の写真です。
上下顎前歯の唇側傾斜が改善され、また理想的な臼歯関係を獲得することができました。
治療中の生活でも、装置が目立たないので気にすることがあまりなかったとご満足をいただきました。
今回の治療例まとめ
今回の治療例の概要を以下におまとめしました。
同様の症状であっても患者さまにより治療方針は異なりますが、ぜひ参考にしてください。
- 診断(学術的):軽度の口唇閉鎖不全、上下顎前歯の唇側傾斜(歯槽性の上下顎前突)、上下顎に軽度の負のALDを有するskeletal Class II、high angle caseの成人女性症例
- 治療法:上顎左右第一小臼歯(4番)、下顎左右第二小臼歯の便宜抜歯、上顎裏側・下顎表側矯正(ハーフリンガル装置)
- 治療期間:2年2カ月
- 治療費:130万円(通院回数29回)すべて税込み
※ハーフリンガル矯正治療費125万円/精密検査料5万円 - リスク:上下顎前歯の重度の歯根吸収
- 副作用:治療中の発音への影響、治療後の凸凹の後戻り、抜歯部位の空隙の後戻り
今回は患者さまのご希望でハーフリンガル矯正装置をお選びしました。
このように当院ではできる限り、患者さまの生活スタイルを鑑みながら治療計画を立てております。