みなさんこんにちは、日本橋はやし矯正歯科 院長の林一夫です。
今回は「重度の開咬(オープンバイト)」の患者さまに対して、外科手術を行わず矯正治療のみで改善した症例をご紹介します。
患者さま情報
- 患者さま:38歳女性
- 主訴:前歯で咬めない、笑ったときに前歯が閉じない
- 診断:口唇閉鎖不全※1、上下顎前歯の唇側傾斜※2、上下顎に中等度の「負のALD※3」を有する骨格性開咬症例
※1:いわゆるポカン口を指します
※2:いわゆる出っ歯を指します
※3:歯が並ぶための必要なスペースが不足していることを指します
治療前の状態
正面の口腔内写真では、前歯部の上下的な開き(開咬)が約10mmあり、通常の平均値(オーバーバイト:マイナス2〜3mm)と比べてかなり大きく開いている状態です。

右側の写真では、
- 第一大臼歯のみが咬合しており、小臼歯〜前歯部は接触がない
- 咬合の支点が後方に偏っている
という、典型的な開咬パターンが確認されました。

スマイル写真からも、舌を前方に押し出す「舌突出癖」が見られます。

この癖は治療期間の延長や後戻りのリスク要因となるため、患者さまにも十分に説明し、できるだけ癖をやめるように気にしながら生活するようにお伝えしました。
外科手術を行わず歯科矯正のみで治療を行いました
通常であれば外科手術を行うべき症例でしたが「外科手術を行わず矯正治療のみにしたい」との患者さまのご希望がありました。
そこで慎重に3Dデジタル矯正での精密検査及び診断を経て、私の経験上から、矯正のみでも可能であると判断いたしました。
しかしながら外科手術を行わない、矯正単独治療でのリスク(主に後戻り)がありますので、そこについてしっかりと説明をさせていただき、リスクを理解していただいたうえで治療を開始しました。
レントゲン所見
パノラマ写真では、上下顎右側に親知らず(智歯・8番)が確認されました。

この親知らずが開咬の原因の一部である可能性が高いため(親知らずが他の歯を圧迫した結果、開咬になっている可能性がある)、治療開始と同時に抜歯を行いました。
治療方針
- 上顎両側第一小臼歯の抜歯
- 上下顎右側第三大臼歯(智歯)の抜歯
- 表側矯正(マルチブラケット装置)による治療
- 舌突出癖の改善指導を併行
治療の流れ
- 精密検査(CBCT・セファロ・模型分析)
- 診断・治療方針の説明
- 上顎小臼歯抜歯+上顎装置装着
- 下顎装置装着
- 上下顎右側親知らずの抜歯
- レベリング・アラインメント
- 抜歯スペース閉鎖
- Up and Downエラスティックによる垂直的コントロール
- 最終調整
治療結果
正面の口腔内写真では、矯正治療のみで重度の開咬が改善され、前歯部の上下的な重なりも平均的なオーバーバイト(2〜3mm)へと回復しました。

右側の写真でも、前歯部の唇側傾斜(出っ歯)の改善と安定した咬合関係が得られています。
また、前歯部の後退により口唇閉鎖不全も解消され、自然な口元となりました。

スマイル写真からも、治療後はより自然で調和の取れた笑顔を獲得でき、患者さまにも大変満足していただけました。

治療期間はおよそ2年で、術後のパノラマ写真では、歯根吸収もなく、良好な位置関係で歯列が安定しています。
まとめ
- 診断:骨格性開咬、上下顎前歯唇側傾斜、口唇閉鎖不全
- 治療方針:上顎両側第一小臼歯+右側智歯抜歯/表側矯正
- リスク:歯根吸収、舌突出癖による治療期間延長、ブラックトライアングル
- 治療期間:約2年
- 治療費:1,100,000円(税込、精密検査料含む/2023年当時)
よくある質問(FAQ)
今回の症例に関連したよくある質問をおまとめしました。
Q:開咬の治療には抜歯が必要ですか?
A:矯正単独で改善を目指す場合、抜歯によるスペース確保が必要になることが多いです。また、抜歯を行った治療の方が、術後の安定性が高い傾向にあります。
Q:舌突出癖はなぜ矯正に悪い影響を与えるのですか?
A:舌が前方に押し出されると、前歯を後退させる力と拮抗してしまい、治療期間の延長や後戻りを引き起こすリスクが高まります。
そのため、舌の位置や癖のコントロールも治療成功の大切な要素になります。
院長コメント
重度の骨格性開咬でも、適切な診断と計画により矯正単独で改善できる場合があります。
骨格や癖の影響を正確に分析し、3D診断を活用して治療を進めることが大切です。
日本橋はやし矯正歯科では横顔シミュレーションを含むカウンセリング(税込3,000円)を行っております。
カウンセリング後に矯正治療のご契約をいただいた方にはカウンセリング料金をキャッシュバックしております。
お気軽にご連絡ください。
























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