研究の概要
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(このコラムは林院長の論文をスタッフがまとめています)
日本橋はやし矯正歯科 院長の林一夫は、これまで100本以上の学術論文を発表し、
この研究は国際的に権威のある学術誌 American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics に掲載されました。
本研究の背景
矯正歯科では、長らく石膏模型を使った診断と治療計画が行われてきました。
しかし、石膏模型は保管や取り扱いに手間がかかり、また計測時の誤差も避けられません。
そこで近年、石膏模型をスキャンしてデジタルデータ化し、バーチャル3次元(3D)モデルとして解析する方法が普及してきました。
さらに、直接口腔内をスキャンする手法が急速に普及しつつあります。
デジタル矯正が広がるなかで重要になるのが「再現性(reproducibility)」です。
異なるソフトウェアや手技で分析しても、同じ結果が得られることが治療計画の信頼性に直結します。
今回紹介する論文は、この再現性に焦点を当て、特に「標準化」がどのような影響を及ぼすかを明らかにした研究です。
研究の目的
本研究(林ら, AJODO, 2015年)の目的は、バーチャル3Dモデルを用いた歯列模型分析において、測定点を統一(標準化)することが再現性に与える影響を明らかにすることです。
加えて、物理的な石膏模型をデジタルノギスで測定したデータとも比較することで、従来法との違いも検討しました。
方法
- 石膏模型5セットを対象にスキャンを実施
- 使用機器:R700(3Shape社)、REXCAN DS2 3D(Solutionix社)
- 使用ソフト:SureSmile、Rapidform、I-DEAS
- 比較対象:物理的な石膏模型をデジタルノギスで計測
標準化を行わず自由に測定した場合と、標準化ルールを設けて測定した場合とで再現性を比較しました。
結果
- 標準化なし:ソフト間で最大0.39mmの誤差が生じた
- 標準化あり:誤差は最大0.099mmに縮小し、有意に再現性が改善した(p < 0.05)
- 全てのソフト・計測法で、標準化を行った場合の方が誤差が小さいことが確認された
- デジタルノギスを用いた石膏模型測定では、依然として誤差が生じやすいことも示された
臨床的意義
この研究が示す最大のポイントは「標準化によってデジタル模型分析の信頼性が大幅に高まる」という点です。
矯正治療では、治療開始前に行う診断・シミュレーションの正確さが、治療結果や患者満足度に直結します。
もし計測方法が術者やソフトによってばらついてしまえば、治療計画そのものに不確実性が生じてしまいます。
しかし標準化を徹底すれば、誰がどのソフトで測定しても安定した結果が得られるため、患者にとっても安心感が増します。
また、物理的な石膏模型での計測が難しい点も改めて明らかになり、デジタル化の意義が裏付けられたといえます。
将来展望
この研究の知見は、今後の3Dデジタル矯正において大きな意味を持ちます。
- AIを活用した自動トレース・診断支援
- 患者ごとの治療計画をクラウド上で共有するチーム医療
- 治療シミュレーションのさらなる精度向上
いずれも、基盤となるのは「信頼性の高い3Dモデル分析」です。今回の研究は、その基盤を支える重要な一歩といえます。
まとめ
日本橋はやし矯正歯科院長である林一夫らによる本研究は、矯正歯科におけるバーチャル3Dモデル分析の再現性を検証し、測定点の標準化が精度を大きく高めることを示しました。
当院では、 国際的な学術研究の成果を参考にしながら 、
参考資料
Influence of standardization on the precision (reproducibility) of dental cast analysis with virtual 3-dimensional models.
American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics
Hayashi K, Chung O, Park S, Lee SP, Sachdeva RC, Mizoguchi I.
URL:https://www.ajodo.org/article/S0889-5406(14)01007-5/abstract


















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