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【論文概要】デジタル矯正の信頼性を高める研究 ― バーチャル3Dモデル分析の再現性について

2025/09/29 05:08:31

日本橋はやし矯正歯科 院長 林 一夫

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研究の概要

 

 

日本橋はやし矯正歯科 院長の林一夫は、これまで100本以上の学術論文を発表し、デジタル矯正の研究に長年取り組んできました。

この研究は国際的に権威のある学術誌 American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics に掲載されました。

 

本研究の背景

 

矯正歯科では、長らく石膏模型を使った診断と治療計画が行われてきました。

しかし、石膏模型は保管や取り扱いに手間がかかり、また計測時の誤差も避けられません。

 

そこで近年、石膏模型をスキャンしてデジタルデータ化し、バーチャル3次元(3D)モデルとして解析する方法が普及してきました。

さらに、直接口腔内をスキャンする手法が急速に普及しつつあります。

 

 

デジタル矯正が広がるなかで重要になるのが「再現性(reproducibility)」です。

異なるソフトウェアや手技で分析しても、同じ結果が得られることが治療計画の信頼性に直結します。

今回紹介する論文は、この再現性に焦点を当て、特に「標準化」がどのような影響を及ぼすかを明らかにした研究です。

 

研究の目的

 

本研究(林ら, AJODO, 2015年)の目的は、バーチャル3Dモデルを用いた歯列模型分析において、測定点を統一(標準化)することが再現性に与える影響を明らかにすることです。

加えて、物理的な石膏模型をデジタルノギスで測定したデータとも比較することで、従来法との違いも検討しました。

 

方法

 

  • 石膏模型5セットを対象にスキャンを実施
  • 使用機器:R700(3Shape社)、REXCAN DS2 3D(Solutionix社)
  • 使用ソフト:SureSmile、Rapidform、I-DEAS
  • 比較対象:物理的な石膏模型をデジタルノギスで計測

標準化を行わず自由に測定した場合と、標準化ルールを設けて測定した場合とで再現性を比較しました。

 

結果

 

  • 標準化なし:ソフト間で最大0.39mmの誤差が生じた
  • 標準化あり:誤差は最大0.099mmに縮小し、有意に再現性が改善した(p < 0.05)
  • 全てのソフト・計測法で、標準化を行った場合の方が誤差が小さいことが確認された
  • デジタルノギスを用いた石膏模型測定では、依然として誤差が生じやすいことも示された

 

臨床的意義

 

この研究が示す最大のポイントは「標準化によってデジタル模型分析の信頼性が大幅に高まる」という点です。

 

矯正治療では、治療開始前に行う診断・シミュレーションの正確さが、治療結果や患者満足度に直結します。

もし計測方法が術者やソフトによってばらついてしまえば、治療計画そのものに不確実性が生じてしまいます。

 

しかし標準化を徹底すれば、誰がどのソフトで測定しても安定した結果が得られるため、患者にとっても安心感が増します。

また、物理的な石膏模型での計測が難しい点も改めて明らかになり、デジタル化の意義が裏付けられたといえます。

 

将来展望

 

この研究の知見は、今後の3Dデジタル矯正において大きな意味を持ちます。

  • AIを活用した自動トレース・診断支援
  • 患者ごとの治療計画をクラウド上で共有するチーム医療
  • 治療シミュレーションのさらなる精度向上

いずれも、基盤となるのは「信頼性の高い3Dモデル分析」です。今回の研究は、その基盤を支える重要な一歩といえます。

 

まとめ

 

日本橋はやし矯正歯科院長である林一夫らによる本研究は、矯正歯科におけるバーチャル3Dモデル分析の再現性を検証し、測定点の標準化が精度を大きく高めることを示しました。

 

当院では、 国際的な学術研究の成果を参考にしながら  、患者さまに安心して治療を受けていただける診療体制づくりを進めています。

 

参考資料

 

Influence of standardization on the precision (reproducibility) of dental cast analysis with virtual 3-dimensional models.
American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics
Hayashi K, Chung O, Park S, Lee SP, Sachdeva RC, Mizoguchi I.

URL:https://www.ajodo.org/article/S0889-5406(14)01007-5/abstract

日本橋はやし矯正歯科 院長 林 一夫

資格ドクターの紹介はこちら

・日本矯正歯科学会認定医
・日本矯正歯科学会指導医
・日本顎関節学会専門医
・日本顎関節学会指導医
・デンツプライシロナ公認 SureSmile/Adance/Orhto/Aligner ファカルティ・ドクター/インストラクター・ドクター

経歴

1995年 北海道医療大学歯学部卒業
1999年 北海道医療大学大学院歯学研究科歯学専攻博士課程修了・学位取得
1999年 海道医療大学歯学部矯正歯科学講座 助手
2003年 アメリカ・ミネソタ大学歯学部口腔科学科 客員研究員
2006年 北海道医療大学歯学部矯正歯科学講座 講師
2007年 北海道医療大学歯学部口腔構造・機能発育学系歯科矯正学分野 講師
2007年 北海道矯正歯科学会 理事
2008年 アメリカ・ノースカロライナ大学歯学部矯正科 客員教授
2008年 北海道医療大学歯学部口腔構造・機能発育学系歯科矯正学分野 准教授
2011年 Digital Orthodontics 研究会 副会長
2015年 日本橋はやし矯正歯科 開院
2018年 K Braces矯正歯科原宿駅前 総院長就任
2021年 日本デジタル矯正歯科学会 副会長就任
2002年 11月 日本矯正歯科学会認定医(第2293号)
2007年 8月 日本矯正歯科学会指導医(第608号)
2013年 5月 日本顎関節学会専門医(第343号)
2013年 5月 日本顎関節学会指導医(第208号)

治療内容について