Category Archives: 症例

重度の開咬(オープンバイト)と口ゴボの治療例

こんにちは。日本橋はやし矯正歯科 院長の林 一夫です。

今回も当院で治療を行った比較的難易度の高い症例についてご紹介させていただきます。

 

患者さま情報

 

  • 患者さま:25歳女性
  • 主訴:重度の開咬(オープンバイト)と口ゴボ
  • 診断:骨格性Ⅱ級の開咬症例(Skeletal Class II Open bite)

 

 

初診時の状態

 

横顔(側貌)から確認できる症状

 

 

  • 上下顎前歯が大きく前方に傾いており、口元の突出感(口ゴボ)が顕著です。
  • 口が閉じにくく、口唇閉鎖不全 によりオトガイ部に「梅干し状のシワ」が発現しています。
  • 下顎の後退感(いわゆる顎なし)が見られます。

 

口腔内(正面)から確認できる症状

 

 

  • 重度の開咬(オープンバイト)です。
  • 上顎歯列弓の狭窄が著しいです。
  • 強い叢生(ガタガタ歯、凸凹歯)が見られます。

 

 

口腔内(右側)から確認できる症状

 

 

  • 上下前歯の強い唇側傾斜が見られます。
  • 大臼歯は反対咬合(クロスバイト)となっています。

 

 

パノラマX線写真

 

 

上下左右に 第三大臼歯(親知らず)が4本あることがわかります。今回の治療ではこれをすべて抜歯しました。

 

開咬の症例で親知らずがある場合は抜歯することが多いです。

 

なぜ抜歯するのかには所説あるのですが、親知らずが1つ前の歯を垂直的に押す力が加わると、奥歯の咬み合わせが高くなってしまい、開咬が悪化する場合があるからと言われています。

 

診断と治療方針、治療の流れ

 

診断と治療方針は以下となります。

  • 診断:骨格性Ⅱ級の開咬症例(Skeletal Class II Open bite)
  • 主な特徴:
    口唇閉鎖不全
    上下顎前歯の著しい唇側傾斜
    歯列の狭窄と叢生
    舌突出癖の可能性
  • 治療方針
    上顎両側第一小臼歯、下顎両側第二小臼歯の抜歯
    上下顎右側第三大臼歯(智歯)の抜歯
    表側矯正(マルチブラケット装置)による治療
    必要に応じて舌突出癖の改善指導を併行

 

治療の流れ

 

以下の流れで治療を行いました。

  1. 精密検査(CBCT・セファロ・模型分析)
  2. 診断・治療方針の説明
  3. 上顎小臼歯抜歯+上顎装置装着
  4. 下顎小臼歯抜歯+下顎装置装着
  5. 抜歯空隙の閉鎖
  6. ディテーリング
  7. 保定

 

 

術後の変化(Outcome)について

 

横顔

 

 

 口ゴボが大幅改善し、また口唇閉鎖が自然になり、オトガイの緊張が消失しました。

下顎のラインも明瞭になり、美しいEライン を獲得できました。

 

正面(口腔内)

 

 

開咬が完全に改善

上下の叢生も整い、理想的なアーチフォームに

 

右側

 

 

大臼歯の反対咬合が改善し、正常な咬合関係を獲得しました。

患者さまにも大変ご満足いただけました。

 

 

治療前 治療後

 

 

まとめ

 

  • 診断:骨格性Ⅱ級の開咬症例(Skeletal Class II Open bite)
  • 主な特徴:
    口唇閉鎖不全
    上下顎前歯の著しい唇側傾斜
    歯列の狭窄と叢生
    舌突出癖の可能性
  • 治療方針
    上顎両側第一小臼歯、下顎両側第二小臼歯の抜歯
    上下顎右側第三大臼歯(智歯)の抜歯
    表側矯正(マルチブラケット装置)による治療
    必要に応じて舌突出癖の改善指導を併行
  • リスク:歯根吸収、抜歯空隙の後戻り、舌癖による開咬の後戻り
  • 治療期間:2年10カ月
  • 治療費:1,100,000円(税込、精密検査料含む/2022年当時)

 

 

最後に

 

いかがでしたでしょうか。今回も比較的重度の症例を見ていただきました。

開咬は外科手術を行うことも多いのですが、手術なしでの治療をご希望される患者さまももちろん多くいらっしゃいます。

 

日本橋はやし矯正歯科では患者さまのご希望沿った治療計画を立案し、実際に治療を行うことが出来る技術と経験があります。

ぜひ一度、カウンセリングにお越しください。

カウンセリングでは「横顔シミュレーション」を行っています。

 

当院のカウンセリングについて詳しくはこちら

 

 

開咬についてのよくある質問

 

Q1. 開咬は、手術なしでも治せますか?

 

A. 症例によりますが、非外科で治せるケースはもちろんあります。

上下顎前歯の傾斜や舌癖が原因の開咬は、適切な抜歯設計と歯軸コントロールにより改善可能です。

 

 

Q2. なぜ第一小臼歯や第二小臼歯を抜歯するのですか?

 

A. 開咬や口ゴボの改善には「前歯の後退(後方移動)」が必要なためです。特に本症例のようにⅡ級傾向の場合で口元の突出感を下げるには、

  • 上顎:第一小臼歯
  • 下顎:第二小臼歯

を選択すると、上下のバランスを整えやすく、仕上がりの横顔が美しくなります。

 

 

Q3. 抜歯すると老けて見えるって本当ですか?

 

A. 今回の症例のように適切にコントロールすれば老けるどころか横顔が圧倒的に綺麗になります。

  • 口唇閉鎖不全
  • オトガイの緊張
  • 口ゴボ

今回の症例の場合、こうした問題が改善され、むしろ若々しい印象になります。

 

 

Q4. 舌癖(舌突出癖)があると、開咬は戻りますか?

 

 

A. はい、戻るリスクがあります。

開咬の大きな原因に1つが“舌の押し出し”であるケースが多く、治療後に 舌癖が残ったままだと再発の可能性があります。

 

 

Q5. 治療期間はどれくらいですか?

 

A. 重度の開咬の場合、3年~3年半程度が多いです。

今回の症例は 2年10カ月 で治療を終えています。

 

 

Q6. 開咬を治すと、見た目以外にどんなメリットがありますか?

 

A. とても多くの機能改善が期待できます。

  • 噛む力が強くなる
  • 食べ物を噛み切りやすくなる
  • 発音の改善
  • 口唇閉鎖不全の改善
  • オトガイ筋の緊張が減る
  • 口呼吸が減少し、鼻呼吸がしやすくなる

 

見た目だけではなく、呼吸と機能面の改善にもつながるため、開咬治療はメリットが大きいです。

重度の開咬(オープンバイト)症例の治療例

みなさんこんにちは、日本橋はやし矯正歯科 院長の林一夫です。

 

今回は「重度の開咬(オープンバイト)」の患者さまに対して、外科手術を行わず矯正治療のみで改善した症例をご紹介します。

 

患者さま情報

 

  • 患者さま:38歳女性
  • 主訴:前歯で咬めない、笑ったときに前歯が閉じない
  • 診断:口唇閉鎖不全※1、上下顎前歯の唇側傾斜※2、上下顎に中等度の「負のALD※3」を有する骨格性開咬症例

※1:いわゆるポカン口を指します

※2:いわゆる出っ歯を指します

※3:歯が並ぶための必要なスペースが不足していることを指します

 

 

治療前の状態

 

正面の口腔内写真では、前歯部の上下的な開き(開咬)が約10mmあり、通常の平均値(オーバーバイト:マイナス2〜3mm)と比べてかなり大きく開いている状態です。

 

右側の写真では、

  • 第一大臼歯のみが咬合しており、小臼歯〜前歯部は接触がない
  • 咬合の支点が後方に偏っている

という、典型的な開咬パターンが確認されました。

 

スマイル写真からも、舌を前方に押し出す「舌突出癖」が見られます。

この癖は治療期間の延長や後戻りのリスク要因となるため、患者さまにも十分に説明し、できるだけ癖をやめるように気にしながら生活するようにお伝えしました。

 

 

外科手術を行わず歯科矯正のみで治療を行いました

 

通常であれば外科手術を行うべき症例でしたが「外科手術を行わず矯正治療のみにしたい」との患者さまのご希望がありました。

そこで慎重に3Dデジタル矯正での精密検査及び診断を経て、私の経験上から、矯正のみでも可能であると判断いたしました。

 

しかしながら外科手術を行わない、矯正単独治療でのリスク(主に後戻り)がありますので、そこについてしっかりと説明をさせていただき、リスクを理解していただいたうえで治療を開始しました。

 

 

レントゲン所見

 

パノラマ写真では、上下顎右側に親知らず(智歯・8番)が確認されました。

この親知らずが開咬の原因の一部である可能性が高いため(親知らずが他の歯を圧迫した結果、開咬になっている可能性がある)、治療開始と同時に抜歯を行いました。

 

 

治療方針

 

  • 上顎両側第一小臼歯の抜歯
  • 上下顎右側第三大臼歯(智歯)の抜歯
  • 表側矯正(マルチブラケット装置)による治療
  • 舌突出癖の改善指導を併行

 

 

治療の流れ

 

  1. 精密検査(CBCT・セファロ・模型分析)
  2. 診断・治療方針の説明
  3. 上顎小臼歯抜歯+上顎装置装着
  4. 下顎装置装着
  5. 上下顎右側親知らずの抜歯
  6. レベリング・アラインメント
  7. 抜歯スペース閉鎖
  8. Up and Downエラスティックによる垂直的コントロール
  9. 最終調整

 

 

治療結果

 

正面の口腔内写真では、矯正治療のみで重度の開咬が改善され、前歯部の上下的な重なりも平均的なオーバーバイト(2〜3mm)へと回復しました。

 

右側の写真でも、前歯部の唇側傾斜(出っ歯)の改善と安定した咬合関係が得られています。

また、前歯部の後退により口唇閉鎖不全も解消され、自然な口元となりました。

 

スマイル写真からも、治療後はより自然で調和の取れた笑顔を獲得でき、患者さまにも大変満足していただけました。

 

治療期間はおよそ2年で、術後のパノラマ写真では、歯根吸収もなく、良好な位置関係で歯列が安定しています。

 

 

まとめ

 

  • 診断:骨格性開咬、上下顎前歯唇側傾斜、口唇閉鎖不全
  • 治療方針:上顎両側第一小臼歯+右側智歯抜歯/表側矯正
  • リスク:歯根吸収、舌突出癖による治療期間延長、ブラックトライアングル
  • 治療期間:約2年
  • 治療費:1,100,000円(税込、精密検査料含む/2023年当時)

 

よくある質問(FAQ)

 

今回の症例に関連したよくある質問をおまとめしました。

 

Q:開咬の治療には抜歯が必要ですか?

A:矯正単独で改善を目指す場合、抜歯によるスペース確保が必要になることが多いです。また、抜歯を行った治療の方が、術後の安定性が高い傾向にあります。

Q:舌突出癖はなぜ矯正に悪い影響を与えるのですか?

A:舌が前方に押し出されると、前歯を後退させる力と拮抗してしまい、治療期間の延長や後戻りを引き起こすリスクが高まります。

そのため、舌の位置や癖のコントロールも治療成功の大切な要素になります。

 

 

院長コメント

 

重度の骨格性開咬でも、適切な診断と計画により矯正単独で改善できる場合があります。

骨格や癖の影響を正確に分析し、3D診断を活用して治療を進めることが大切です。


日本橋はやし矯正歯科では横顔シミュレーションを含むカウンセリング(税込3,000円)を行っております。

カウンセリング後に矯正治療のご契約をいただいた方にはカウンセリング料金をキャッシュバックしております。

お気軽にご連絡ください。

口ゴボ、口唇閉鎖不全、出っ歯、八重歯、梅干しジワの矯正治療例

みなさんこんにちは、日本橋はやし矯正歯科院長の林一夫です。
今回は抜歯矯正を行った口ゴボ治療の治療例を紹介させていただきます。

 

 

口ゴボってどんな状態?

 

口ゴボとは、前歯が出ているため、特に横顔で口元全体が「ゴボ」っと突き出たような状態になっていることを指す一般的な言葉です。

医療用語ではなく俗称ですが、みなさまに伝わりやすいのでコラムではこの「口ゴボ」という言葉を用いています。

 

 

口ゴボの確かめ方は?

 

口ゴボを確かめるには「Eライン」を基準にします。

Eラインとは「エステティックライン(Esthetic Line)」の略で、鼻先と顎先を結んだ線を指し、この線に唇が触れるか少し内側におさまっているのが美しいEラインであるとされています。

そしてこのEラインよりも外側に出てしまっている状態を「口ゴボ」といいます。

 

Eラインよりかなり出ている状態を一般的には指しますが、個人の感じ方によるものなので、出ているのが少しだけでもとても気にされる方もいらっしゃいます。

 

 

口ゴボの治療例

 

それでは口ゴボの矯正治療例をご紹介します。

 

まず、こちらは治療前の横顔の写真です。

先にご説明した、いわゆる口ゴボと言われる上下の口唇が前方に突出した状態です。

Eラインの線を引いてみましたのでご覧ください。

特に下顎の口唇が前方に突出してることがお分かりいただけると思います。

 

また軽度の口唇閉鎖不全も認められ、オトガイ部が筋緊張でくぼんでいることがお分かりなると思います。

 

こちらはスマイルの写真です。上顎前歯の重度の唇側傾斜(いわゆる出っ歯です)により中切歯が大きく感じられ、審美的に問題が生じています。

 

次に正面の口腔内写真をご紹介します。

 

いわゆる八重歯(犬歯の低位唇側転位)が認められ、側切歯と言われる前から2番目の歯も不正な位置に萌出しています。

 

右側からの口腔内写真です。上下顎の前歯が著しく前方に傾斜していることがお分かりいただけると思います。

 

パノラマレントゲン写真です。

上下左右の親知らずの埋伏が認められます。

矯正治療中にタイミングを見てすべて抜去する予定です。

 

※親知らずの抜歯は保険適用になるので大学病院を紹介させていただき、抜歯を行うことが多いです。

 

 

診断結果と治療方針、治療の流れについて

 

どんな診断結果、そしてどんな装置と抜歯方法で治したのか

 

診断結果と装置、抜歯方法は以下となりました。

  • 診断:口唇閉鎖不全、上下顎前歯の唇側傾斜、上顎両側犬歯の低位唇側転位、上下顎に重度の叢生が認められる骨格性Ⅱ級症例
  • 治療方針:上顎両側第一小臼歯、下顎両側第二小臼歯の抜歯、ハーフリンガル矯正(上顎裏側・下顎表側)により治療を行った

 

どんな治療の流れだったのか

 

以下の流れで治療を行いました。

  1. まず精密検査を行います。(CBCT・セファロ・模型分析)
  2. 次に診断・治療方針の説明をします。
  3. 上顎小臼歯の抜歯と上顎の装置装着を行います。(裏側)
  4. 下顎小臼歯の抜歯と下顎の装置装着を行います。(表側)
  5. レベリング・アラインメントを行います。
    (レベリング・アライメントとは、矯正治療において歯の傾きや前後左右の位置を整えることを指します)
  6. 抜歯スペースの閉鎖をします。
  7. 最終調整をして、治療が終了となります。

 

 

治療後のお写真をご紹介します

 

治療終了時の横顔の顔面写真です。

口ゴボはどのくらい改善された?

 

治療後の口ゴボは、美しいEラインを獲得できるほどに改善し、理想的な横顔となりました。

また口唇閉鎖不全も解消されたことでオトガイの形態も良く改善されています。

 

スマイル写真です。とても自然な理想的なスマイルを獲得できました。

 

口ゴボが治って笑顔になれました

 

治療前は「口ゴボだから、笑うと口元が気になる」とお話されていましたが、治療後は「口ゴボが治って自然に笑えるようになった」と笑顔でおっしゃっていました。

患者さまも大変満足されていらっしゃいました。

 

口腔内の写真です。まずは正面です。

 

八重歯、個々の歯の位置異常が適切に整えられていることがお分かりいただけると思います。

 

右側です。上下顎前歯の唇側傾斜が改善され理想的な歯軸傾斜と上下的なかみ合わせを獲得することができました。

 

 

親知らずの抜歯はなぜ必要だった?

 

親知らずを抜歯した理由は、矯正治療後の安定性にあります。

矯正治療後に、歯の凸凹などの後戻りの防止予防のために親知らずの抜歯はとても重要で、抜歯することで術後の咬合の安定が高まります。

パノラマレントゲン写真です。親知らずは、4本とも抜歯されています。

 

 

今回の口ゴボの矯正治療のまとめです

 

口ゴボのハーフリンガル矯正(上顎裏側・下顎表側)による矯正治療のまとめです。

  • 診断:口唇閉鎖不全、上下顎前歯の唇側傾斜、上顎両側犬歯の低位唇側転位、上下顎に重度の叢生が認められる骨格性Ⅱ級症例
  • 治療方針:上顎両側第一小臼歯、下顎両側第二小臼歯の抜歯、ハーフリンガル矯正(上顎裏側・下顎表側)による治療
  • リスク:歯肉退縮、ブラックトライアングル、歯根吸収
  • 治療期間:3年
  • 治療費:125万円(税込み、精密検査料含む/2022年当時の治療費)

 

 

口ゴボを治すためのよくある質問です

 

口ゴボにお悩みの方からよく聞かれる質問に答えました。

 

Q:口ゴボを改善するには抜歯が必要ですか?

 

A:口ゴボの突出の程度や骨格によりますが、歯の位置だけでなく顎骨全体のバランスを整えるため、抜歯を行うことでより自然な横顔を得られるケースが多いです。

 

Q:口ゴボを改善するには親知らずを抜かないとだめですか?

 

A:口ゴボの矯正治療後の後戻りを防ぐため、また術後の咬合の安定を図るために、矯正治療終了時に親知らずが残っている場合は抜歯をおすすめすることが多いです。


口ゴボでお悩みの方はぜひ日本橋はやし矯正歯科にご相談ください。CBCT・セファロを用いた精度の高いカウンセリングを行います(3,000円/税込)。

 

カウンセリング後に精密検査をご予約いただいた方には、カウンセリング料金をキャッシュバックさせていただいております(カウンセリング料金が実質無料になります)。

 

 

比較的重度の歯の凸凹、八重歯、正中線のズレの治療例

みなさんこんにちは、日本橋はやし矯正歯科院長の林 一夫です。

今回は表側矯正で治療を行った症例をご紹介いたします。

 

歯の凸凹と八重歯がお悩みでした

 

22歳男性、歯の凸凹(乱杭歯、叢生、ガチャ歯などとも呼ばれます)と八重歯の治療をご希望され来院されました。

 

まずは口腔内の写真を見ていただきます。

上顎の左右の犬歯が八重歯の状態です。八重歯は専門的には「犬歯の低位唇側転位」といいます。

下顎の犬歯も同様に低位唇側転位の状態を示しています。

 

歯肉退縮と歯根露出もあります

 

また、すべての犬歯において歯肉退縮が認められ、歯根がわずかではありますが露出していました。

歯肉退縮は矯正後に改善することがない場合が多い(悪化してしまうこともあります)ので、しっかりと状況の説明を行い治療を開始する必要があります。

 

左右側および上下顎の口腔内写真です。お分かりいただけるように凸凹の程度はかなり重度です。

 

正中線もズレていました

 

スマイル写真では、正中線のズレもはっきりわかります。

顔面正中に対して上顎正中は右側にずれています。反対に、下顎正中は左側にズレています。

 

以下の青い線がおよその顔面正中です。ズレていることがわかります。

 

ご本人的には正中線もしっかり合わせてほしいとご要望をいただきました。

 

異常な生え方をしていた親知らず

 

初診時のパノラマレントゲン写真です。上下顎左右側に智歯(親知らず)が認められます。

 

 

患者さまへのご説明と診断、治療プラン

 

こちらは診断と治療プランです。

治療プランは患者さまのお悩みとご希望をお聞きし、こちらからは歯並びに加えて歯肉退縮や歯根露出、親知らずについてなどもご説明させていただき、最終的に合意に至っています。

  • 診断:上下顎前歯の唇側傾斜、上下顎両側犬歯の低位唇側転位、上下顎に重度の叢生を伴う骨格性Ⅰ級症例
  • 治療方針:上顎両側第一小臼歯、下顎右側第一小臼歯の抜歯をして表側矯正装置で治療
    ※左右のかみ合わせに差があり、また正中も合わせる治療方針であるため、あえて下顎は右側のみの抜歯となっています

 

今回患者さまが表側矯正装置を選択したのは、やはり他の矯正方法と比較して費用が安いことが挙げられます。

また最近は矯正装置が見えても気にされない方が徐々に増えているように感じます。

それだけ、歯列矯正というものが普及してきていることが嬉しく思います。

 

 

治療終了、歯列が整いました

 

治療終了時の口腔内写真を見ていただきます。

まず正面です。

八重歯も適切に改善され、また重度の叢生もきれいに整っていることがお分かりいただけると思います。

 

犬歯の歯肉退縮は初診時と大きく変化はありませんが、悪化は避けることができました。

また歯列が整ったことであまり目立たなくなっています。

 

 

左右側および上下顎の口腔内写真をご覧いただきます。

歯列弓も左右対称に修正され、理想的な歯並びとかみ合わせを獲得することが出来ました。

 

治療後のスマイル写真です。

顔面正中に対して上下顎の歯の正中もぴったりと合わせることが出来、より良いスマイルを提供することが出きました。

 

治療終了時のパノラマレントゲン写真を示します。大臼歯のかみ合わせの調整や術後の後戻りの予防を考慮して治療途中で“親知らず”はすべて抜歯しました。

上に挙げた治療前の写真と比較してみました。

 

治療前
治療後

 

 

今回の治療例まとめ

 

今回の治療例の概要を以下におまとめしました。

同様の症状であっても患者さまにより治療方針は異なりますが、ぜひ参考にしてください。

 

  • 診断:上下顎前歯の唇側傾斜、上下顎両側犬歯の低位唇側転位、上下顎に重度の叢生を伴う骨格性Ⅰ級症例
  • 治療法:上顎両側第一小臼歯、下顎右側第一小臼歯の抜歯抜歯、上下顎表側矯正による治療
  • 治療期間:2年6か月
  • リスク:歯肉退縮の悪化、上下顎前歯部のブラックトライアングルおよび歯根吸収
  • 治療費:110万円(税込み、精密検査料含む/2022年当時の費用)

久しぶりの表側矯正の症例紹介でしたが、表側矯正をご希望になる方は決して少ないわけではなくもちろんたくさんいらっしゃいます。

 

そしてコラムの中でも書きましたが、最近は矯正装置をあまり気にしない方が増えているので、ひとつの装置にこだわることなくさまざまな可能性やメリットなどを検討されることをお勧めします。

 

カウンセリングの際にご質問いただければそういったこともしっかり説明させていただきます。

 

カウンセリングは初回のみ有料(3,000円)となりますが、精密検査をお申込みいただいた方にはキャッシュバックいたしますので実質無料となります。

 

ぜひご予約ください。お待ちしています。

 

歯の凸凹、八重歯、正中線のズレの治療例

みなさんこんにちは日本橋はやし矯正歯科院長の林 一夫です。
今回はハーフリンガル(上顎裏側矯正、下顎表側矯正)で治療を行った症例をご紹介いたします。

 

 

歯並びの悪さで笑顔に自信を持てませんでした

 

35歳、女性。歯並びの凸凹(叢生、ガチャ歯、乱杭歯)、八重歯等の改善を希望して来院されました。

歯の凸凹が重度で笑顔に自信がないと、かなり悩まれていた患者さま。

 

こちらが治療前のスマイルのお写真です。

 

治療前の口腔内写真、こちらは正面からのお写真です。

上顎の八重歯が目立ち、また歯の凸凹も多く、正中線もわずかにズレています。

 

右側面の口腔内写真です。

歯の凸凹が目立つ上、上顎右側第一小臼歯の歯肉退縮が認められ歯根が露出しています。

※第一小臼歯は奥から4番目の歯です。

 

 

歯肉退縮への対応も治療プランに含める

 

歯肉退縮とは、歯茎が下がって、本来歯肉の中にあるべき歯根が露出してしまうことを指します。

放っておくと虫歯になりやすかったり等の健康リスクがあります。

歯肉退縮の原因は、咬合性外傷、歯ぎしり、食いしばり等のさまざまであり、予防する方法はあまりありませんので、早期の発見と対応が大切になります。

今回は矯正治療の過程でこの歯肉退縮も対応することになりました。

 

 

患者さまへのご説明と診断、治療プラン

 

患者さまのお悩みとご希望に加え、こちらからは歯肉退縮についても説明をさせていただき、最終的に合意に至った診断と治療方針の概要です。

  • 診断:上下顎に重度の叢生、前歯の唇側傾斜を有する骨格性のⅠ級症例
  • 治療方針:上下顎両側第一小臼歯、下顎両側第二小臼歯の抜歯してハーフリンガル装置で治療

上記にあるように、歯肉退縮が見られる上顎第一小臼歯も抜歯いたします。

 

歯肉退縮がなければ本来は別な歯の抜歯をしているケースですが、歯肉退縮している歯を抜歯して歯列を整えることで、口腔内の健康状態が改善されます。

 

 

3Dデジタル矯正のシミュレーションで治療計画を立てます

 

当院ではこのように骨、歯、歯根をモデル化した3Dモデルを用いて治療前から治療後に至るまでのシミュレーションを行い、治療計画を詳細に計画しております。

 

こちらは治療前の3Dモデルです。

こちらの画像を見ると、上顎第一小臼歯の歯肉退縮がよくわかります。

 

こちらは抜歯をした状態です。

 

そしてこちらが治療後のシミュレーションモデルです。

 

横に並べると変化の状態がよくわかります。

 

治療前 抜歯後 治療後

 

 

治療後は「自信を持って笑顔になれる」とお喜びに

 

術後のスマイル写真です。

スマイルラインも改善され「自信をもって笑顔が作れる」と大変お喜びいただきました。

 

術後の口腔内写真、まず正面です。

叢生、八重歯が適切に改善され、理想的な歯並びとかみ合わせを獲得することができました。

 

右側面です。

上顎の第一小臼歯を抜歯したので歯肉退縮もなくなり、歯肉の部分もバランスよくなりました。

 

術後予測との比較を示します。

 

治療前 治療後
シミュレーション
口腔内写真

 

ほぼ計画通りに治療が完了したことがお分かりいただけると思います。

 

デジタル技術を用いた治療計画のは予知性が高く、治療前にしっかりと術後のイメージをつかんでいただき治療を開始していきますので、安心して治療を継続していただくことが可能だと言うことをご理解いただけたと思います。

 

 

今回の治療例まとめ

 

今回の治療例の概要を以下におまとめしました。

同様の症状であっても患者さまにより治療方針は異なりますが、ぜひ参考にしてください。

  • 診断:上下顎叢生、犬歯の低位唇側転位、上下顎前歯の唇側傾斜をもつ骨格性Ⅰ級症例
  • 治療法:上顎両側第一小臼歯、下顎両側第二小臼歯の抜歯、上顎裏側・下顎表側矯正による治療
  • 治療期間:2年8か月
  • リスク:前歯部のブラックトライアングルおよび歯根吸収
  • 治療費:120万円(税込み、精密検査料含む/2022年当時の費用)

治療後に笑顔に自信が持てるとお喜びになる患者さまは多く、その度に私たちは「歯科矯正をやっていてよかった」と誇りに思います。

 

そして、3Dデジタル矯正は治療計画の設計に当たり、非常に有効な技術であることがお分かりいただけたと思います。