こんにちは。日本橋はやし矯正歯科 院長の林 一夫です。今回は、新しいデジタルテクノロジーを用いた、側貌(横顔)の術後シミュレーションについてお話したいと思います。
口唇閉鎖不全で、梅干状隆起が発現
矯正治療を検討されている患者さんには、口元が出ていることを気にされている方が多くいらっしゃいます。
このような患者様は、口が閉じにくいという症状を合わせて持っている場合が多いです。口唇閉鎖不全と表現されることもあります。
無理に口を閉じようとして梅干状の隆起がオトガイ部に発現し、さらに口元の突出感が目立ってしまっているのが特徴のひとつです。
まずは口唇閉鎖不全の患者様の横顔と正面の写真をご覧ください。
▼ここが「梅干状隆起」の部分です。
▼まるで梅干のように見えるのでこう呼ばれます。
程度にもよりますが、出ている口元を下げるには一般的に
- 歯を抜く
- そのスペースを利用して前歯を奥に引っ込める
ということで、口元の突出感を改善することができる場合が多いです。もちろん場合によっては健康な歯を抜くということもあります。
そうなると矯正科医がいかに必要だと考えていても、患者様にとっては大きな心理的抵抗がある場合があります。
側貌(横顔)シミュレーションの方法
私は歯を抜くことによってどれだけ改善されるのか、より分かりやすい視覚的なシミュレーションを行うことができば、患者様と矯正科医との治療目標に対する認識の差を排除できると考えています。
それでは、この患者様を例に、どのようなステップで側貌(横顔)のシミュレーションを行うのか、説明していきたいと思います。
▼まず、側面頭部エックス線写真(側面セファロ)を用いて分析を行います。
▼次に、横顔の写真とトレース図(分析に用いた線)を重ね合わせます。
▼次に、前歯を後ろに下げるシミュレーションを行います。
このシミュレーションでは、上下の前歯を7mmほど後退させています。唇の位置も、歯の移動に伴い後ろに後退します。また、梅干状の隆起も改善された状態を予測しました。
▼そして、次の写真が最終的にシミュレーションされた横顔になります。
いかがでしょうか? 上下の前歯を後ろに下げることで、口元の突出した感じが改善され、よりバランスの良い側貌(横顔)が得られることがわかります。
予測は予測であって、結果ではない!
このように視覚的な術後の予測は患者様と矯正科医とのより良い相互理解の助けとなることがお分かりいただけたと思います。
しかしながら、このようなシミュレーションには問題点もあります。シミュレーション結果はあくまでも予測であり、結果を保証するものではないと言うことです。
私もこのようなシミュレーションを患者様にお見せする場合、そのことについてはしっかりと説明しています。
患者様のご要望をより正確に把握し、矯正治療にできることの限界を説明しながら、相互に理解する結果を導ける。矯正歯科医はそのための丁寧なコミュニケーションを行うことが必要であると考えています。
私が重要視する「コミュニケーション」についてはこちらが分かりやすいので、ぜひご一読ください。
デジタル矯正システムは、患者様との良好な信頼関係にも貢献します