日本橋はやし矯正歯科 TOP > コラム > 歯を抜かない「非抜歯」矯正治療はどんな場合ができるのか

歯を抜かない「非抜歯」矯正治療はどんな場合ができるのか

2025/08/19 12:56:42

日本橋はやし矯正歯科 院長 林 一夫

資格ドクターの紹介はこちら

・日本矯正歯科学会認定医
・日本矯正歯科学会指導医
・日本顎関節学会専門医
・日本顎関節学会指導医
・デンツプライシロナ公認 SureSmile/Adance/Orhto/Aligner ファカルティ・ドクター/インストラクター・ドクター

矯正治療は抜歯をする場合と抜歯をしない「非抜歯」で治療する場合があります。

抜歯は「歯が並ぶスペースを作る」ために行うのですが、抜歯に抵抗がある方はやはり多いです。

虫歯でもない健康な歯は残したいし、歯を抜くことは非常に身体に負担がかかるイメージがあるからだと思います。

 

非抜歯で矯正治療をできるケースはありますが、非抜歯で行う処置、そして非抜歯で治療できないケースなどあります。

今回は非抜歯の矯正治療についてご説明します。

 

 

矯正治療でなぜ抜歯を行うのか

 

矯正治療で抜歯をするのは、先にも述べたように「歯が並ぶスペースを確保する」ためです。

そもそも日本人が歯並びが悪い方が多いのはお口、そして顎が小さいから。
歯が並ぶスペースがないから歯並びが悪くなってしまっているので、並べ直すためにはスペースがどうしても必要になるというわけです。

 

矯正治療で行う抜歯は「便宜抜歯(べんぎばっし)」と呼ばれ、虫歯や歯周病の治療というわけではありませんから保険適用外となります。

抜歯の対象になる歯は多くの場合第一小臼歯(前から4番目の歯)または第二小臼歯(前から5番目の歯)ですが、歯並びの状態によって他の歯を抜くケースもあります。

 

当院では抜歯をおこなっておらず、患者さまのかかりつけの歯医者さんで抜いていただくか、または当院がご紹介するクリニックで行っていただきます。

 

 

抜歯を行わない場合の処置について

 

患者さまが非抜歯を強くご希望になっている、または非抜歯でも矯正可能なほど軽度である場合は「IPR(Inter Proximal Reduction)」という処置を行うことが多いです。

ディスキングとも呼ばれるこの処置は、歯の表面をほんの少し削る(0.5ミリ程度です)ことで少しずつスペースを作るというもの。
例えば「出っ歯だけ治したい」などという場合はこれで改善できる場合もあります。

 

以下は前歯の「ブラックトライアングル」を目立たないようにするためにIPRを行っています。

比較するとよくわかりますね。

IPR(ディスキング)前 IPR(ディスキング)後

 

IPRについてスタッフの矯正体験記事で詳しく書かれています。ぜひご覧ください。

矯正体験レポート【スタッフA】(3)IPRの説明と感想

 

 

また、狭窄歯列弓(きょうさくしれつきゅう)と言って、歯の左右が狭くなってしまっている方は矯正装置により左右を広げる処置を行うことでスペースが生まれる場合があります。

矯正器具で奥歯を後方に移動する場合もあります。

  • どうしても小臼歯を抜歯したくない方
  • すでに小臼歯を抜歯してるのにもかかわらず、再治療等でさらに前歯を後退させたいという要望がある場合
  • 抜歯しなくてもわずかな臼歯の後方移動で改善できそうな場合

等、条件が限られているのであまり一般的なケースではありません。

これらの処置を行う場合は、先に説明した通り、日本人はそもそもお口の中のスペースにあまり余裕がないので、IPRを併用することが多いです。

 

非抜歯矯正のシミュレーション例

 

こちらは非抜歯での、下顎の狭窄歯列の3Dシミュレーションによる予測モデルです。

 

治療前がこちらです。

治療は上下裏側矯正で、積極的なIPR、そして歯列弓の側方拡大を行います。

 

治療後のシミュレーションがこちらです。

実際の治療は問題なくシミュレーション通りに行うことができました。

 

非抜歯での矯正のメリット・デメリット

 

メリット:歯を抜かずに済む!

 

非抜歯矯正のメリットで一番最初に思いつくのはなんと言っても「歯を抜かずに済む」ことです。
何もない健康な歯であればあるほど抜きたくないと普通は思いますよね。

 

メリット:治療期間が短い

 

抜歯をした場合、歯を抜いた部分が塞がるまで矯正治療はある程度制限がかけられます。

また抜歯をすると大きくスペースが開くのでその部分が埋まるように綺麗に歯を並べるのには少し時間がかかってしまいます。

このように、様々な理由で治療期間が比較的短くなります。

 

メリット:抜歯による身体的な、そして生活上の負担がない

 

抜歯は歯の根っこから取り除き、大きな穴が開きます。治療中は麻酔をかけますが麻酔が切れた後はどうしても痛みがあり、出血も多少はあります。

穴が塞がるまでは食事も気を使わなければいけませんし、身体的、精神的な負担になってしまいますが、非抜歯矯正はそのようなことがありません。

 

デメリット:口元が出てしまう可能性がある

 

歯を並べるためのスペースがIPR等で十分に確保されない場合、歯が並んでくると口元が出てきてしまうことがあります。
当院ではカウンセリング時に十分にシミュレーションを行なっているので想定外でこのようなことが起きることはまずありませんが、3Dデジタル矯正を使わない矯正クリニックでは十分に注意していただきたいと思います。

 

デメリット:軽度な症例に限られる

 

どのような症例でも非抜歯で矯正治療が可能というものではありません。

繰り返しになりますが、歯並びが悪いほとんどの理由が「お口の中のスペース不足」なので、比較的軽度な症例に限られます。

 

非抜歯での当院の治療例

 

ここからは当院の非抜歯での矯正治療の一部をご紹介します。

 

治療期間6ヶ月:上下前歯の凸凹(叢生)と開咬の矯正治療例

治療期間6ヶ月:上下前歯の凸凹(叢生)と開咬の矯正治療例

こちらは患者さまのご希望で非抜歯になりました。中等度の歯の凸凹で、表側の部分矯正で治療期間6ヶ月です。

 

歯の凸凹、出っ歯、過蓋咬合の治療例

歯の凸凹、出っ歯、過蓋咬合の治療例

狭窄歯列弓が見られましたので歯列弓の側方拡大とIPRの併用で治療しました。

 

正中離開、空隙歯列弓の治療例(マウスピース矯正)

この患者さまは正中離開、空隙歯列弓、つまり「すきっ歯」だったので抜歯の必要がない数少ない例です。
マウスピース矯正での治療となりました。

 

叢生、過蓋咬合、鋏状咬合の治療例(マウスピース矯正)

こちらは比較的重度ではありますが、歯列弓の側方拡大とIPRの併用で歯列を整えることが可能と判断し治療しました。
また患者さまのご希望でマウスピース矯正での治療となりました。

 

治療期間6ヶ月:上下前歯の凸凹(叢生)のマウスピースによる矯正

治療期間6ヶ月:上下前歯の凸凹(叢生)のマウスピースによる矯正

叢生(歯の凸凹)は中等度で非抜歯と短期間での治療をご希望になっていらっしゃいました。
6ヶ月で治療が終了し、リスクであったブラックトライアングルも最小限に抑えられました。

 

正中のズレ、歯の凸凹、出っ歯、過蓋咬合の治療例

正中のズレ、歯の凸凹、出っ歯、過蓋咬合の治療例

比較的歯の凸凹が大きかったのですが、初診時のイーライン(E-line、Eライン)が問題なかったことやご本人の希望も含めて検討し、非抜歯で治療が可能と判断しました。

 

 

患者さまのご希望を最優先に最適な結果を求める

 

先にも記した通り、全ての矯正治療で抜歯しなくて済むわけではありません。

抜歯をすることによって患者さまの治療中の過ごし方と治療後の未来がこうなる、またしないことによってこうなるということをよくお話させていただき、最終的に患者さまにご判断いただいた方針を最優先させていただきます。

また3Dデジタル矯正のシミュレーションで、抜歯する場合としない場合もご覧いただき、治療の品質との兼ね合いもお考えいただきます。

 

当クリニックでは患者さまとのコミュニケーションを最も大切と考え日々の治療に臨んでおります。

日本橋はやし矯正歯科 院長 林 一夫

資格ドクターの紹介はこちら

・日本矯正歯科学会認定医
・日本矯正歯科学会指導医
・日本顎関節学会専門医
・日本顎関節学会指導医
・デンツプライシロナ公認 SureSmile/Adance/Orhto/Aligner ファカルティ・ドクター/インストラクター・ドクター

経歴

1995年 北海道医療大学歯学部卒業
1999年 北海道医療大学大学院歯学研究科歯学専攻博士課程修了・学位取得
1999年 海道医療大学歯学部矯正歯科学講座 助手
2003年 アメリカ・ミネソタ大学歯学部口腔科学科 客員研究員
2006年 北海道医療大学歯学部矯正歯科学講座 講師
2007年 北海道医療大学歯学部口腔構造・機能発育学系歯科矯正学分野 講師
2007年 北海道矯正歯科学会 理事
2008年 アメリカ・ノースカロライナ大学歯学部矯正科 客員教授
2008年 北海道医療大学歯学部口腔構造・機能発育学系歯科矯正学分野 准教授
2011年 Digital Orthodontics 研究会 副会長
2015年 日本橋はやし矯正歯科 開院
2018年 K Braces矯正歯科原宿駅前 総院長就任
2021年 日本デジタル矯正歯科学会 副会長就任
2002年 11月 日本矯正歯科学会認定医(第2293号)
2007年 8月 日本矯正歯科学会指導医(第608号)
2013年 5月 日本顎関節学会専門医(第343号)
2013年 5月 日本顎関節学会指導医(第208号)

治療内容について