歯が出ていて唇を閉じにくい、唇が突出していて自分の横顔が好きになれないなど出っ歯で悩んでいる人は少なくありません。
出っ歯は見た目が気になるだけでなく放置しておくと虫歯などのトラブルの原因になる可能性があるため、できるだけ早く改善しておきたいです。
本記事では、出っ歯になる原因や治療方法、自力で改善できるのかなどについて解説します。
出っ歯の治療事例も紹介するため、出っ歯で悩んでいる方は治療を進める上での参考にしてください。
出っ歯とは?
出っ歯は上顎前突とも呼ばれ、上顎や上の前歯が前に出過ぎている歯並びのことです。唇を閉じると、頤(おとがい)と呼ばれる顎の先端に梅干しのようなシワが出ることもあります。
正常な歯並びの場合、横から見ると犬歯から後ろの歯については上下で互い違いに並んでおり、1歯対2歯という咬み合わせになっています。
一方出っ歯の場合、このような咬み合わせから0.5本分のずれが生じ、1歯対1歯となっているのです。
さらに激しい出っ歯ともなれば、歯1本分のずれが起きているケースもあります。
出っ歯になる原因は?
出っ歯になる原因は遺伝や癖など主に4つあります。人によっては無意識にしている癖もあるのではないでしょうか。ここでは、出っ歯になる主な原因を具体的に紹介します。
舌で歯を押す
舌で前歯を押し出したり、前歯で舌を噛んだりといった動作を習慣的に行うと、徐々に出っ歯になることがあります。
とはいえ自分では気がつかず、いつの間にか癖になっているケースが多く、他人に指摘してもらえることもなかなかありません。
癖になっていると気付いたら意識して直すことが大切です。
指しゃぶりや爪を噛む
爪を噛んだり指をしゃぶったりすることで、歯が押されて出っ歯になるケースもあります。
子どもの頃からの癖
口呼吸など子どもの頃からの癖が原因で出っ歯になることもあります。
口呼吸をすることで、無意識に舌で歯を押してしまったり、唇の力が弱くなることで顎の成長やかみ合わせに影響を与えたりすることが考えられます。
遺伝
出っ歯は遺伝が原因のケースもあります。
具体的には、上の前歯が前方に位置する状態や、上下の顎のバランスの悪さ(上の顎の骨が成長しすぎたり、下の顎の骨だけ成長が不足していたりすること)などです。
また、上の歯のサイズが大きいことで、結果的に出っ歯になってしまうこともあります。
出っ歯の主なタイプ
出っ歯の主なタイプには、上下顎前突と上顎前突の2種類があります。それぞれについて具体的な症状や治療法などを紹介します。
上下顎前突(じょうげがくぜんとつ)
上下顎前突は、上下とも前歯が前面に突き出ている歯並びです。
正常な歯並び同様に上下顎の歯並びに前後的なずれがない咬み合わせが多いですが、犬歯~奥歯の咬み合わせがややずれている場合もあります。
また、歯だけが突き出ているケースだけでなく顎の骨に問題があるケースもあります。
上下顎前突では、口が閉じづらい、口元が出ているといった症状が見られます。また、将来的に前歯部分の歯周病にもなりやすいです。
主な治療法は、上下左右の小臼歯を合わせて4本を抜き、矯正を行うというものです。
抜歯によってできた隙間を利用し、上下の突き出た前歯を後ろに移動させます。
歯並びのデコボコが小さい場合は前歯を大きく移動させることが可能ですが、その分矯正の治療期間が長くなります。
上顎前突(じょうがくぜんとつ)
上顎前突は、犬歯~奥歯の咬み合わせがずれており、上顎の歯列より下顎の歯列が後ろにずれている状態です。
下顎の骨は後にずれている場合もあれば、ずれていないこともあります。
上顎前突では、口を閉じづらい、咬む能力が低下するといった症状が見られます。
顎に負担がかかるため、顎関節症を引き起こすこともあり注意が必要です。
また、笑った時に歯茎が見えやすいことから、見た目のコンプレックスなど心理的な問題を抱えてしまうケースもあります。
治療法は歯の状態によって異なります。例えば下顎歯列のデコボコが小さく角度が正常な場合は、上顎左右の小臼歯のみ抜いて上顎の歯列に隙間を作り、前歯を後方に動かす矯正を行います。
一方、下顎歯列のデコボコや角度が大きく抜歯の必要がある場合は、上下左右の4本の小臼歯を抜き、上顎の前歯と下顎の前歯の両方を後方に動かすための矯正を行います。
出っ歯の治療事例
出っ歯は適切な治療を受けることができれば大きく改善できます。ここでは、前述した上下顎前突と上顎前突それぞれのケースについて、実際の治療事例を紹介します。
上下顎前突+叢生(そうせい)
横顔では上下の唇が前方に突出し、口元全体が出っ張った感じになっています。
口が閉じにくい「口唇閉鎖不全」の状態なので、無理に閉じようとするとオトガイ部に「しわ」ができてしまっています(「梅干し状の隆起」と呼ばれるものです)。
また口元が出っ張っている影響もあり、見た目に顎が引っ込んでいる(一般に「顎なし」と言われる状態です)のが強調されてしまっています。
口腔内は、重度の出っ歯と上下の前歯が前に傾いている状態(上下顎前突といいます)が認められました。
この事例で行った治療は上下4本の歯を抜き、その隙間を活用することで前歯を後ろに下げる方法です。デジタル矯正システムを導入し表側矯正を行う治療法を選択しました。
治療内容は下記の通りです。
- 上左右の第一小臼歯、下顎左右第二小臼歯を抜歯して、可能な限り前歯を後ろに下げる
- 矯正用のインプラント(ミニスクリュー、アンカースクリューともいいます)を用いて、抜いた隙間を全て使って前歯を後退させる
上記内容で横顔と口元の改善を行うことになりました。
上下の前歯を後退させることで口唇閉鎖不全が改善したことで、とてもすっきりとした、審美的な横顔を獲得することができました。
口腔内の写真でも治療前からの改善がご確認いただけます。
治療期間は2年6か月です。
上顎前突+叢生(そうせい)
治療前は上顎前突の状態で、下顎に叢生が見られました。こちらの事例もデジタル矯正システムを使用しワイヤー矯正での治療を選択しています。
まず4本全ての親知らずを抜歯し、上顎の真ん中の骨に矯正用インプラントを埋め込みました。
麻酔から矯正用インプラントの埋め込みが完了するまでは、約15分程度です。
その後、下顎の裏側に装置を装着して上下左右の4番目の歯も抜き、上顎に器具と矯正装置を装着しました。
上顎に矯正装置を取りつけてから3カ月経過した時点で、横顔は美しくなり、口元の出っ張りも大きく改善されていきました。
治療過程の詳細は以下の記事よりご確認いただけます。
出っ歯は自分で改善できる?
alt名:出っ歯は自分で改善できる?
すでに生じている出っ歯を自分で改善することは不可能です。
矯正治療専門クリニック相談してください。しかしながら、矯正治療と並行して行うことで治療効果を高めることが出来るトレーニングがあります。
リップトレーニング
出っ歯の人が口を閉じると顎の先端部分にある頤(おとがい)に梅干しができることが多いです。
通常は口輪筋という口の周りを一周する筋肉を使用して口を閉じますが、出っ歯の人は唇を閉じる際に頤の筋肉を使うことが原因です。
そこで、口輪筋を使うトレーニングを矯正治療と並行して行うことが有効です。
口輪筋を使うトレーニングはいくつかありますが、どこでも簡単にできる方法として下記の方法があります。
- 「うー」と発音し唇を前に出す
- 「あー」と発音しながら口角を引き上げる(笑顔を作る)
- 1~2を10回程度繰り返す
M.F.T.(口腔筋機能療法)
重度の口唇閉鎖不全の場合、専門家の指導を受けながらのM.F.T. (口腔筋機能療法)を行うことが有効です。
医療法人社団デジタルデンティストリーのクリニックにはMFTの専門教育を受けた医師が在籍しておりますのでスタッフまでお問い合わせください。
M.F.T. (口腔筋機能療法)のトレーニングとして下記の方法があります。
- 口を大きく開けて「あ」と発音する
- 「い」と発音して口を横に大きく広げる
- 「う」と発音して口をできるだけすぼめる
- 「べ」と発音して舌を大きく下に伸ばす
また、普段から正しい舌の位置を知って意識しておく必要があります。
正しい舌の位置は上の前歯のふくらみの後ろ部分です。
まとめ
上の歯列より下の歯列が前面に出ている出っ歯の原因は、子どもの頃からの習慣や遺伝が主な原因です。
見た目のコンプレックスだけでなく、虫歯や歯周病など他の問題を引き起こす場合もあるため、できるだけ改善しておくことが重要です。
日本橋はやし矯正歯科では、デジタル矯正システムを用いた矯正治療によって、精度を高めながらそれぞれの患者様に合わせた最適な治療をデザインできます。
出っ歯や歯並びでお悩みの方はぜひご相談ください。